ななしのごんべえ


       これは、パガンで遭遇した世にも不思議な人物のお話です。
彼と出会ったのは、パガンのホテルの食堂でした。
同じ宿に泊っていた人たちと食堂で朝飯を食べて、しばらく
おしゃべりをしていた時にはやってきました。
彼は旅なれたかんじのおっさんで30歳手前ぐらいという
感じでした。

さて、この後の話を分かりやすくするために、ここで登場
人物を紹介させてもらいます。一緒に食堂にいた人に
次の人がいました。

Mさん は女性で新聞社に就職を希望する大学3年生でした。
Kくん は男性で医学部に在籍する大学2年生でした。

そして、そこに彼がやってきたのです。

なにやら、ヤンゴンから夜行バスで来たようでした。
さて、彼が

彼「ご一緒してもよろしいですか?」
といったので
「どうぞ」
といって一緒に話をすることになりました。

さて、喋り出したときから、「この人やばいなー」と思いました。
しばらくすると悪い予感は大的中でした。
彼は自分がもっている知識を僕等に無差別に大量にばらまくのです。

違うはなしをしていても、無理矢理自分の話にこじつけて
自分の知識を自慢するのです。しかも言い方に問題ありです。

例えばMさんが新聞社に就職したいという話が出た時に、彼は
彼「いやー昔アフリカの日本人宿に泊った時に新聞社の入社
  問題がありまして、解いてみたんですよ、そしたら次の
  中から織田信長について書いたことのない作家を挙げよ。
  なんて問題もありましてね。」


てなことを言い出して、4人ぐらい作家の名前を挙げだしたんです。
するとMさんに
彼「もちろん、わかりますよね?常識ですよね?」
挑発的に聞くのです。そしてMさんが
M「いやわかりません」
というと
彼「えっわからないんですか?それで新聞社受けるんですか?」
みたいなことを言うのです。ここでMさんぶち切れ。
彼にメンチきりまくってます。

次に僕が夏に網膜剥離になったことを話していました。
Kくんが医学生であることを知った彼は、
彼「緑内障と白内障がどーのこーのでなんちゃらかんちゃら」
と難しいホントか嘘か分からない説明をしだすのです。そして
Kくんに向かって
彼「医学部の学生なら、もちろんわかりますよね?」
というのです。そしてKくんが
K「いや ちょっとわかりません。専門はまだやってないので」
というと
彼「えっ!?高校の理科の範囲じゃないですか」
と言うのです。ここでKくんもぶち切れ。
そんなわけねーだろと心の中で叫び顔をあげるとそこには、

あきらかにガンを飛ばしているMさんとKくんの姿がありました。

しかし彼は一向に場の雰囲気を感じ取ることなく自分の知識を
ばらまいています。僕はなんとか場の雰囲気を直そうとするのですが
彼の勢いはとまらず、一触即発の雰囲気のなか1時間ほどがすぎ
彼は去って行きました。

さてその後、僕は、飛行機を買うためにMさんとかと旅行代理店に
行きました。そしてチケットを買った後にその代理店の店内で
ダラダラ喋っていると、突然彼が入ってきました。

入ってきただけでMさんの表情が一変しました。彼はカルカッタ行き
の飛行機の値段を確かめたかったようでした。そして用事がすむと
さっさと帰れば良いのに、またもや僕らの話に割り込んできました。

ちなみにこの時は、Mさんともう一人サッカー部のマネージャーをしていたTさん
もいました。
さて、彼は話に割り込んできて
彼「電波少年で猿岩石のヒッチハイクを信じ込んだ人々がかわいそうだ」
と言い出しました。そこで
僕「でも別にいいんじゃないですか?テレビなんてやらせなくしては
  なりたたないし、誰かがそれで被害にあったわけじゃないし。
  電波少年はもともとバラエティなんだし」

と言うと、彼は

彼「いやっ!あれを信じて泣いた人がいるんですよ。その人たちは
  どーなるんですか!責任はだれが取るんですか?」

と言うので
僕「でも、映画でもドラマでも作り物でなく人は沢山いるし
  一瞬でも感動して泣いたなら、それは思い出としてとっとけば
  いいんじゃないですか。視聴者が判断して行けば良いと思いますよ」

と言いました。しかし彼は、何故か電波少年のことにこだわりブーブー
文句をたれていました。僕は一回一回答えていたのですが、はっきり
言ってどうでもよかったので話題をかえようとMさんとTさんを見ると

ぶちキレを通り越して無視して寝てしまってました。

いいかげんどうでも良い話を終えたかったので,
ちょっとして彼から逃げました。

ここまででも結構長くなってしまいましたが、彼の本領はここからなのです。
僕はKくんとTさんと遺跡に夕日を見に行きました。
すると彼がいました。僕のまわりの空気が一瞬、冬の稚内になりました。
しかし彼は他の遺跡を見に行くようでどっかにいってしまいました。
まわりの空気は常夏のハワイになりました。そして夕日を4人でしばらく見ていると
なんと彼がもどってきました。空気は、北極になりました。

その後の展開は、まーお察しのとおりです・・・

さてその後、夕食を食べに行きました。もちろん彼ぬきで。
遺跡でもうひとりの女性(Aさん)と知り合ったので、
4人でご飯を食べにいきました。

そして4人で楽しく楽しく食事をしていたところ暗闇から彼が登場しました。
(ここのレストランは、屋外にありテーブルの上にローソクがともしてある)

テーブルの上に、KTの方から怒りの溶岩流が流れてきています。

その後はお察しの通り・・・

その後も彼とは毎日いろんな所で出くわしました。
彼「いやーどーもどーもー」なんていってくるのです。
本当は偶然を装ってつけてきているのではないかと思い、どこへいくにも
彼が来るかこないかとても心配でした。そして心配すればするほど彼は
登場し、自分の知識をひけらかし、その場の雰囲気をハリケーン(超大型)
のごとく破壊し、人々を切れさせていくのです。

さて、次の日、彼はCNNが見たいからという理由で僕等の泊っている
ホテル(一泊3$)から一泊10$のホテルに移って行きました。
そのホテルは2kmほど離れてたので、これで彼とも会う事はなく
一安心。と思っていました。

そして、夕刻、昨日のレストランでKくんTさんと3人でご飯を食べてい
ました。するとどこから来たのか彼がまたもや登場・・・・
しかも

彼「相席してもよろしいですよね?」
と。確かに嫌だけど「嫌です」とは言えないので
僕「えーどーぞ」と言ってしました。

するとKTの方から僕に向けて冷たすぎて痛すぎる真冬のシベリア
のような視線が突き刺さりました。
「断れよボケー!!」という一致団結のメッセージ付きで。

で、まぁ相席することになったんですが、僕等は僕等で注文し、僕等だけで
廻し食いして食べ終わると先に帰ってきてしましました。

さて次の日。僕達はポッパ山というパガンから50kmくらいはなれた観光地
にMさんとTさんとAさんと行く事になって
いました。しかし前日・・・

彼がホテルを移る前、僕等が食堂で話をしている時にまたもや登場しました。
そしてそのとき僕等がポッパ山という観光地について話をしていたら
彼「ポッパ山いかれるんですかー。そーですかー。いいですねー」
なんて言ってくるので、彼はパガンは2回目だといってるし既にいったこと
あるんだなと思ったので、

僕「行かれた事あるんですか?」
と聞いてしまいました。すると彼は砂漠地帯で干からびた魚がオアシスに
飛び込み水を得たみたいに
彼「ないんですよー!!!!!!!いいですねー!!!!!・・・・・・」
彼は次になにか一言欲しそうです。しかし
僕「・・・」
M「・・・」
T「・・・」
彼「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
負けました。彼の無言の圧力に。そして
僕「いっ・・・一緒に行きますか?」
彼「はい!えーご一緒してよろしいんですか〜?
  なんか女性ばっかりのところでハーレムだったのにわるいなー」


ここで僕はMT両氏のいけにえになりました。視線でリンチにあいました。

ボコボコにされました。

というわけで、この日彼も一緒にポッパ山に行く事になりました。
さてタクシーを借切っていくのですが、車は20年くらい前の日産の
ピックアップトラックでした。ちなみにお値段は一日で12$でした。

結構小さく。室内には1人しか乗れません。残り4人は荷台です。
Mさんが体調を少々崩していたので助手席に乗ってもらいました。
そして、彼は荷台の後ろの方にのりました。すると彼は以上に怖がり
わーわーうるさいのです。

「これはヤバイよー。スピード速すぎるってー。なんちゃらかんちゃら」
さっきまでチベットでバスが河に流されてさー大変だったよーなんて
自慢していたのにです。きっとバスが流された話もうそでしょう。

だって、たいしたスピードは出ていないし、女性のAさんもTさんも
いたって普通にしてるんですから。

とにかく僕達はポッパ山までの2時間くらい彼の奇声を聞きつづける
羽目になったのでした。

さて、帰り。彼は車まで走っていき速攻荷台の一番前に飛び乗りました。
そこが一番安全だと思ったのでしょう。女性二人を差し置いて自分が
一番安全と思うところに飛び乗ったのです。
なんてこざかしい・・・

そしてパガンに帰りました。そのまま昼食を食べに行きました。
彼もついてきました。その食堂は、小皿がメチャメチャ出てきて食べた
分だけ払うところだったのですが、彼は他の人に廻すということは
なくひたすらおいしいと思ったものを独り占めして食いまくってました。

セルフサービスでお茶があったのですが、それも彼は煎れてもらうのが
当然の様に、自分では煎れずに僕等に煎れてもらい、
ひたすら食いまくってました。

また、彼は、世の中にかなり不満があるようで、
パイロットは給料貰いすぎてる。

スチュワーデスなんてあんなに給料やらなくていい。

スポーツ選手は労働者として認めてよいのでしょうか?
あんなもの見てても一つもおもしろくない。

と捻じ曲がった意見を言いまくりです。

ここでTさんぶち切れ。

「スポーツの面白さがわからないなんて ホンットに哀れな人!!」

と彼に対して初めて嫌悪感を言葉にだしました。
しかし彼はそれでもとまらず

「相撲は単なる肉のぶつかりあいで気持ち悪い」
などというのです。
ここで今度はMさんぶち切れ。

「私なんて相撲部屋のおかみさんになってもいいって思ったぐらい
 相撲好きなんですけど。」


といって彼にメンチきりまくってます。

それでも彼は止まりません。
ちなみに彼は国家試験に受かり来年から国家公務員になるようなのです。
彼「第一スポーツとかして楽しんでるだけで金を稼げること
  が変ですよ。芸能人もしかりですね。
  あれは労働なんて呼べないでしょ。」

ととにかくお金にうるさいし、スポ−ツなどを見て余暇を過ごすこと
に否定的です。そこで僕は
僕「では、汗水たらして働いている肉体労働者からみたら
  あなたが来年からする仕事も労働じゃないっていわれ
  るんじゃないですか?」


と言ったら、ちょっと困ったあげくに

彼「僕は頭で汗かくので立派な労働です。」

とアホな解答をしてきました。本当にこんな人が国家公務員になって
いいんでしょうか?やばいでしょう・・・

とにかくこんな感じでうるさいしとても迷惑でした。
そして、さらにはこの日のタクシー代を払うときです。
一日12$を5人で割ると一人2.4$になります。
めんどくさいので僕が
僕「二人が3$で三人が2$ということで」
といったらMさんが冗談っぽく
M「じゃ年齢高い人が3$ということで」

と言いました。すると彼は

彼「なにいってるんだそんなのはダメだ。絶対ダメだ!」

と真剣に怒るのです。

で結局2$と残り0.4$は現地通貨に換算してということに
なりました。彼がまとめて払うというので彼に2$と0.4$分
の現地通貨を払うことにしました。

ここからがまたややこしいのですが・・・・
ミャンマーには外人が強制両替させられる兌換券があります。
1FEC=1$
で300$の強制両替です。しかもこのFECは再両替できないので
使いきるしかありません。そこでみなFECをなくすために色々
苦労します。

さてこの街では
1$=1FEC=320K(チャット)でした。(1K=0.3円)
そこで
僕「じゃあ320Kの0.4掛けということで」
といったら彼は
彼「僕はヤンゴンで330Kで換えてきたから330Kだ」
というのです。そこで僕は
僕「でもここはヤンゴンじゃないし。僕はヤンゴンで327でした。
  この街のレートは320だし」

といったのですが、彼はガンとして譲りません。
彼「FECじゃなくてドルで交換したから330だった」
というのです。でも彼がこれから払うのはドルではなくFECで
払うのです。全く矛盾してます。でもこの矛盾に気付いていないのは
彼だけです。

しかも彼、皆から2$ずつ受け取った時にAさんが彼に2FEC
渡したら、Aさんが翌日にミャンマーを離れるのを知っていながら
彼「FECで払うんですか?」
といやがりました。自分はFECで払うんだからその貰った2FEC
に10FEC足して払えば良いのに
皆から$をもらって自分はFECを払おうというサムイ魂胆です。

もうめんどくさくなったので、
僕「じゃもう間とって325Kで」
と妥協し押しきりました。
そして325kx0.4=130kを彼に払いました。
彼はかなり納得言ってないようでしたが、もう無視しました。
その後僕等はアイスを食べに行きました。彼はついてきました。
一体なんなんでしょ。でも帰れよ!!とも言えないので一応一緒に
食べました。皆は30Kのアイスを食べました。しかし彼は70K
の豪華アイスを食べていました。

さて先程の彼は
 320x0.4=128K を嫌がり
 330x0.4=132K に固執し、結局
 325x0.4=130K を4人分手に入れたわけですが

計算すると320Kのときと330Kの時は
わずか16Kしか変わりません。

16Kは4.8円です。

わずか16Kに固執しまくってダダこねまくったくせに、自分は軽く
70Kのアイスを食べるは
一泊10$=3300K
のホテルに泊まるはで、全く持って至上最低のケチケチ人間でした。
そして、彼はそんな感じなので誰にも

「名前は?」

と聞かれることなかったので、今もってMさんやKくんTさんなどと
彼の話になる時は、あいつ とか やつ とか あのおっさん とか
呼ばれています.

さすがに押しつけがましい彼も、自分の名前を聞かれてもいないのに
僕等に押し付ける事は出来なかったのでしょう。

しかも彼の事を形にして残すが嫌だったので日記は一切彼の存在を無視して
楽しいことだけ書きとめました。

まだまだ彼については書きたいことはありますが、代表的なことだけで
こんなにもあるのでこれぐらいにしておきます。

ななしのごんべえさんお願いだからもう二度と僕等の前に現れないで
下さい。おねがいします。

いやー長かったー・・・・