イギリスといえばこの赤いバスが有名ですね。


 僕がイギリスに行ったのは今から約10年ほど前。まだ、英語も「This is a Pen」
 しか、しゃべることのできなかった時である。初めての海外旅行であった。この時
 は、中学生だったので親と一緒にツアー旅行だった。イギリス旅行で忘れられない
 出来事は、ウィンザー城と言う英国王室の別荘に行った時に起こったのである。

 僕は長旅の疲れから移動中のバスの中で寝てしまっていた。ふと目を覚ますと
 バスの中は誰も居ない。おいてけぼりだ。10分程待ったが誰も帰ってこない。
 急に不安になった僕はみんなの後を追うことに決めた。この決断が後で大泣き
 を見ることになるとは、その時の僕は思いもしなかった。

 一銭も持たずにバスのドアを開けて人の流れに沿って走った。まだ、そんなに
 遠くに行っていないのじゃないかと思った。駐車場から5分ぐらい走ると城の
 入り口があった。もう入ってしまったのか?いやまだお土産を見ているかもし
 れない。お金をもっていないので、入場料が払えない僕はそう思しかなかった。

 しかし案の定ツアー客一行は何処にも居なかった。城に入れない僕は入場口で
 皆の帰りを待つことにした。しかし待っても待っても帰ってこない。その時、
 僕は入り口と出口は別々なのではないかと思った。そうなったらバスで待つしかない。
 そう思い僕はバスに戻ることにした。この時何か嫌な予感がした。


僕は見ていないお城

 その予感が的中した。帰ってきたら元あった場所に、バスがないのだ。この
 事態は「これはペンです」野郎にとっては非常に深刻な事態だ。会話能力がなく、バス
   もなく、金もない。この日本を遠く離れた異国の地で僕は一体どうすればいいのだろうか?

 僕は走った。

「まだ近くにバスがあるかもしれない。」

「親は俺が居ないことに気づいていないのか?」

「何処ですれちがったのだろう?」

「僕はこのまま捨てられてしまうのだろうか?」


 下らないことをいろいろ考えながら必死にバスを探して走った。その時!バスがあった!
 大喜びでそのバスに近づくと、何かおかしい。みんな金髪になっている。

 みんなが金髪になっているのではなく、同じ会社のバスで金髪さん達のツアーだ
 ったのだ。では僕のバスは何処に行ったのだ? しかし走りつかれた僕は、何を思
 ったのか違うと分かっているそのバスに乗り込んだのだ。当然乗客の僕を見る目は
 冷たかった。その時乗客の一人が「ヘーイ、ユーのバスは違うぜ!」とでも言った
 のだろう。当然僕には理解できなかったので必殺の愛想笑い[Japanese smile]を出
 してなぜ彼に取り入ろうとしていた。

 その時このバスの運ちゃんが、話しかけてきた。多分「どうしたんだボーズ?」と聞
 いたのだろうと思ったので僕は、その時使える英語力の全てを駆使して

「マイ バス ゴー」   「ストライプ バス ゴー」

 と言った。緑と白のストライプのバスに乗っていたのだ。ストライプなんて難しい単
 語をよく知っていたと自分でも感心したが、私が小学生のころアクアフレッシュなる
 歯磨き粉(白,赤,青三色のストライプ)が流行ったのでなんとなく覚えていたのだろう。

 しかしこの訳のわからない英語が功を奏し、この運ちゃんが親切にも私の乗っていた
 バスを探してくれて連れていってくれたのだ。この時は気が動転していたのでどうや
 って探してくれたのかは分からないが無事僕は「マイ ストライプ バス」にたどり着けた。

 しかし、不安は解消されなかった。運ちゃんはこのバスだよと言ってドアを
 開けて座らしてくれたがマイ バスの運ちゃんをはじめ皆いないのだ。しかし不安が
 る僕を気にする風もなく運ちゃんは彼のストライプバスに帰っていってしまった。

 何分経ったろうか皆が帰ってきた。良かった本当にこのバスだったのだ。運ちゃんも
 何処かで休憩していたのだろう、時を同じくして帰ってきた。ほっとして涙が出てき
 た。もう止まらない。その時薄情な僕の母は「楽しかった。あんたも来れば良かっ
 たのに。」と言ったのである。しかし最も薄情なのは実は父だったのである。

 父は寝ている僕を起こさずに、母に「「奴は車の中で待っている。」と言った。」と言った
 のである。母は安易にもその言葉を信じ、そして僕は置いていかれたのでした。

 兎にも角にもこの出来事の印象が強いために僕にとってイギリスは

このページの一番上にあるような

「赤い2階建バスの走る国」ではなく
「緑と白のストライプのバスの国」であり

「紳士の国」ではなく
「薄情者の国」

となってしまったのでありました。

(薄情なのは日本人の私の親なのですが・・・)

僕の代わりに因縁のウィンザー城へ行ってきて下さい。