母がマグマ大使になった日

       これは、フランスでの出来事が発端になったある少年が体験した世にも
恐ろしいストーリーである。ちなみに普通皆さんが想像するマグマ大使
は、このようなものだと思います。僕も昔はそうでした。

             

僕がフランスを訪れたのはもう12年も前です。 イギリスでえらい目に会い
イタリアで食を満喫して、スイスで高山病に打ち勝ち、最後に流れ着いたのが
フランスでした。この時は家族でのパック旅行であったためにツアールートに
おみやげ屋、免税店がてんこ盛りでした。坊主頭の中学生にとってそれは、と
てもつまらないルートでした。そして事件はパリの街中の美術品関連のお土産
屋の中で発生したのです。その事件に気付いたのはその店を後にして街中のカ
フェでお金を払おうとした時です。母が「あれま財布がないわよ」というのです。

そうです。軽くスリにすられちゃいました。その中には母がいうには現金少々と
トラベラーズチェック(以下TC)が3万円分ほど入っていたらしいのです。

そしてもスリの被害?にあっていたらしいのです。 先程の店の中で人ごみに紛
れてポケットに手を突っ込まれて探られたらしいのです。しかし財布すらもっ
ていなかった兄は単にホモの痴漢にあっただけとなってしまったのです。

この時兄はスリのなすがまま前2つ後ろ2つと計4つのポケットを探られたらし
いです。スリの方も探しても探しても財布がないのでさぞむかついたことでしょう。

さて無事?TCを差し止めて日本に帰国しました。そしてそれから10日ほど
たって僕が家で留守番をしていた時です。TCの会社から電話がかかって来ました。

何やら
「TCを再発行するので紛失した分の金額を確認したい」
というような趣旨の電話でした。僕は
「僕はよくわからないのですが」というと
「では、お母さんに無くされた金額は30万円分でよろしいですね、とお伝え下さい。」
と言われたのです。
「・・・・」僕が聞いていた金額は3万円でした。

これはいいネタを仕入れました。母はおそらく父も騙しているのでしょう。
そして30−3=27万円で自分に貴金属でも買う予定だったのでしょう。

スリにあった母が今度は家族に対する詐欺と横領を働こうとしているのです。
「これは大変だ! 母を犯罪者にしてはいけない」と思った僕は、何故か

まず母に電話のことを伝え口止め料に美味しいものを食べさせてもらいました。

しかし良心の呵責に悩まされた僕は、夕食時に大々的に家族に真実を語りました。

あの時の母の表情が徐々ににあるようなマグマ大使ではなくにあるようなマグマ大使化
して行った姿は今なお僕のトラウマとなって母=マグマ大使という訳のわからない
イメージを植え付けています。

     
    目が怖い                 後ろ姿がこれまた怖い。

そしてその後、僕が母に対する恐喝及び詐欺罪でおしかりを受けたのは当然の報いです。